私の選択

スペイン巡礼

仕事を辞めてスペイン800キロ巡礼の旅へ!

選択その1【路】フランス人の道

スペイン巡礼とは、キリストの12使徒の1人である聖ヤコブの眠るサンティアゴ・デ・コンポステーラの大聖堂を目指して、カミーノ・デ・サンティアゴ(=サンティアゴへの道、サンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路)を徒歩や自転車、馬を使って巡るもの。その路は世界遺産にも登録されています。

巡礼ルートは様々で、「ポルトガルの道」や「イギリス人の道」など、ヨーロッパ各地からサンティアゴに続く道があります。中でもいちばん有名で人気があるのが「フランス人の道」で、フランスのサン・ジャン・ピエ・ド・ポーから約800㎞の巡礼路を歩きます。

初めての巡礼旅、私は「フランス人の道」一択でした。私がスペイン巡礼に憧れるきっかけとなった本の著者が歩いたのもフランス人の道でしたし(スペイン巡礼との出会い)、一番人気なので人も宿も情報も多く、安心かなと思ったからです。

選択その2【距離】800キロ

スペイン巡礼では、サンティアゴ・デ・コンポステーラまでの巡礼路を徒歩で100㎞以上歩くと巡礼証明書がもらえます。つまり、10日〜2週間の休暇があれば巡礼旅ができるわけです。

100㎞歩くか800㎞歩くか。こちらについても私は「800㎞」一択でした。まずは100㎞歩いてみてから800㎞に挑戦することも少し考えましたが、そもそもの夢(=巡礼路を800㎞歩く)が大前提にあったので、歩くからには800㎞にトライでしょ!と決めていました。

選択その3【季節】5月

どの季節に歩くのか。色々な情報を見ていると、夏は暑くて人も多い、冬は雪が降りアルベルゲが閉まるところもある。ということで、よくオススメされている5〜6月か9〜10月のどちらかで考えることにしました。

検討した結果、私は5月から6月にかけて歩くことにしました。退職のタイミング、自分の年齢と帰国後に予定している転職活動のこと、往復の飛行機代、色々考えて決めました。暑くなる前の方が南京虫のリスクも少なそう?!という勝手なイメージもありました。あとは、冬に向かって寒くなる中歩くよりも、夏に向かって暑くなる中歩く方が気分もあがりそう、緑が生き生きとしていて気持ち良さそう、などなど。降雨量や気温の比較もして、総合的に判断しました。

実は姉がフランス在住なのですが、姉の夏休みの一時帰国に合わせてフランスから日本へ一緒に帰ろうと思ったことも、この時期を選んだ理由のひとつだったりします。(スペイン巡礼を終えたら、残りの期間は姉の家に滞在しのんびり過ごす予定。)

選択その4【仕事】キャリアブレイク

800㎞歩くには30〜40日ほどかかるそうです。焦って歩きたくないので、私は40日で見積もりました。日本からの移動も考えると、かなりの長期旅行となります。では仕事をどうするのか。休職か退職かでとても迷いましたが、私は退職を選択しました。そもそも、この旅を決断したきっかけのひとつが仕事だったからです。

今の仕事は人間関係もよく、業務内容も自分には向いていたのでそれなりに楽しく働かせてもらっていました。この先何もなければ、この慣れた環境で同じような日々を過ごすんだろうなぁという感じ。ですが、働けば働くほど何だか満足のいかない自分がいて、小さな不満とか違和感を感じながら、このままこれでいいのかなぁとモヤモヤしていたわけです。周囲へ相談する中で、私は自己評価が低すぎると言われたのですが、確かに自分をアピールするのは苦手なので割と過小評価気味。今のままでいいんだと無理やり自分を納得させていた部分もあったんだと思います。

この年で仕事を辞めて次が見つかるのだろうかと不安もありダラダラと続けていましたが、いやいや転職するなら30代のうち!もっと自分に合った良い条件の職場が見つかるはず!動くなら今だ!と強気な自分もいたり。周囲からのアドバイスもあり、モヤモヤしたまま何年も過ごすなんてもったいない。ここは思い切って転職だ!でもその前に人生の休暇をとってスペイン巡礼だ!ついでにヨーロッパ旅行だ!と決めました。

仕事を辞めてスペイン巡礼に行くわけですが、この先どうするかは歩きながら考えるつもりです。なので次の仕事は決めずに出発します。そう、キャリアブレイクという選択です。

そんな私の最終決断前に読んだ一冊がこちらです。

仕事のモヤモヤに効くキャリアブレイクという選択肢 次決めずに辞めてもうまくいく人生戦略 [ 北野 貴大 ]

たまたま知った「キャリアブレイク」という言葉。もう少し知りたいと思いこの本を読んでみました。冒頭の【今の会社で働き続けて年をとっていくイメージが浮かばない】【まぁ今だってすごく不満なわけじゃないけど・・・でも「なんか違う」気はしている】という文章からして、私にぴったりだと思ったからです。

以下はこの本を読んで私の心に響いた言葉の数々です。一部抜粋します。

前に進むこと、頑張ることを中心に学んできた人たちは、方向転換が苦手なように感じます。休止も苦手です。
離職期間を自分の転機と捉えて過ごしていた人は、必ずと言っていいほど、キャリアブレイクがその後の人生に良い影響となった、キャリアブレイクして良かったと言っています。
離職期間は、自分が自由にデザインできる時間ですから、いろんな活動が生まれます。
時には、働いていた期間よりも、人生にとって大きな影響を与える期間となっている人もいます。すなわち、「ブランク」ではなく、「キャリア」なのです。会社に所属している期間だけが、キャリアなのではありません。会社に所属している期間だけ、成長している訳ではありません。
「どこにお金を使うのか」という目線は、「人生で何を大切にするか」という問いに似ているように思います。
キャリアブレイク期間は心置きなく悩める時間です。他人を参考にするよりも、自分の中にある悩みや葛藤を大切にして育んだ感性こそ、これからの社会に必要なものなのだと思います。

(「仕事のモヤモヤに効くキャリアブレイクという選択肢 次決めずに辞めてもうまくいく人生戦略」より引用)

仕事を辞めることを悪のように思っていて不安でしたが(ほとんどの日本人がそう思っているでしょう)、そうではないと思えるようになりました。他人にどう思われるか、ではなく、自分がどうしたいかを軸に生きていきたい。キャリアブレイクという選択はきっと私の人生の糧になるはず。

突破力?!

職場に退職意向とスペイン巡礼へ行くことを伝えると「休職して良いから旅を終えたら戻ってきてほしい」と言っていただきました。ありがたい言葉でしたが、現状から何かを変えたい私にとって、今の職場に籍を残して旅立つ気持ちにはどうしてもなれませんでした。(というのと、同僚が一生懸命働いている中、自分だけ好きに休みを取るのは流石に気が引けた。)後ろ盾のない状態で歩いて、これから私がどう生きていきたいのか、考えてきたいと思います。

退職の相談をする中で上司から「○○さんには突破力がある。どんなことでも最後までやり遂げる。」という嬉しい言葉をいただきました。どうやら今はその力が仕事ではなくスペイン巡礼にむかっているようです。スペイン巡礼、やり遂げます!